お知らせ|NEWS

建築と木工

今日は三月三日、桃の節句ですね。

 

いつもより早い春の訪れですが、

感染症と、その様々な影響が心配な春です。

 

今日は本のご紹介です。

 

 

『ノースライト』

横山秀夫 新潮社 2019年

 

一軒の住居建築と、ブルーノ・タウトのデザインと思われる木製の椅子を

モチーフにしたミステリー小説です。

 

タイトルのノースライトは、北向きの窓からの採光のこと。

季節に関係なく安定した光が入ることで、例えば芸術家のアトリエとか、

工場ののこぎり屋根における採光で使われることがあります。

 

バブル期にフル操業していた建築士の主人公の回想部分。

「鉄とガラスとコンクリートがすべてだった。・・・

美しいものしか生き残れない。そのわかりやすく、

空恐ろしい世界で何者かになろうとしていた。」

 

主人公の父親が、戦後の高度経済成長期にダム建設の現場で働く型枠職人だったことや、

公共建築のコンペティションに関わるお話で建築士の友人やライバルとの

心の綾が描かれたり、登場人物の一人の輸入家具商の盛衰など、

戦後の日本の建築やインテリアの世界の様々なエピソードが織り交ぜられてゆきます。

 

戦争のない平和な世の中であるとはいえ、

時代の大きな流れの中で戦いながら生きていかざるを得ない、

現代のこの国の人々のひりひりした痛みを伴う様々な人間模様。

 

そこに、思想的な理由で1930年代に日本に渡航し、

本業たる建築の仕事は殆どできない境遇で、

仙台や高崎の地で木工芸のデザインに携わっていた

ドイツの建築家・ブルーノ・タウトのロマンや史実が

重ねられることで、物語には不思議な奥行きが加わってきます。

 

地上すべてのものにあまねく行き渡る太陽の光が、

北の方角から照射して私たちに見せてくれるものとは、

いったい何なのでしょうか?

 

 

木の生命力、未来の森

新年明けましておめでとうございます。

旧年中はいろいろとお世話になりありがとうございました。

本年も何卒よろしくお願い申し上げます。

 

冬らしく、午後からは少し陽差しも少なくなり、

冷えてくるような日が続きます。

 

今日は本のご紹介です。

 

 

『木のみかた 街を歩こう、森へ行こう』

 コーヒーと一冊 10

 三浦豊 ミシマ社 2017年

 

木というか、植物の生命力を感じられる書物。

 

著者の方は、森の案内人という肩書きがついています。 

庭師さんだそうです。なるほどと思います。

 

森や山のみならず、街なかに生えてきた植物なども

取り上げられています。

 

現在の日本では、木を伐る人がいなくなり、

かつてないほど木が生い茂っている状態なのだそうです。

これが、温暖化や少子化とともに進行してゆくと、

いったいどのようになってゆくのでしょうか?

 

ピックアップされている木(植物)は、

桐、赤芽柏(アカメガシワ)、葛、楠(クスノキ)、

神樹、桜、山桑、棕櫚、臭木(クサギ)、

山漆、山櫨(ヤマハゼ)、白膠木(ヌルデ)、

椋の木、イチョウ、欅、松、榎。

 

それぞれの木にまつわるコンパクトにまとめられた解説からは、

著者の、植物に寄り添うような姿勢がにじみだしています。

 

森の語源は「盛り」、林の語源は「生やす」だそうです。

どちらにしても豊穣な緑のイメージが思い浮かびます。

 

ほんとうに太古の昔から、

この日本列島の豊かな植生と、樹木たちの生命力に包まれて、

人間やその他の動物たちのいのちもまた、

脈々とつながれてきたのだなあと感じ入る一冊です。

 

人と木の新しい関係も芽生えてゆくとなおよいですね。

 

 

 

 

 

 

 

住むこと、暮らすこと。

11月に入りました。

今日は立冬。

 

朝晩は冷え込みますが、日中の陽光は暖かく、

あたりを明るく照らしてくれます。

 

今日は本のご紹介です。

 

 

『父の縁側、私の書斎』

檀ふみ 新潮文庫 平成18年

 

作家・檀一雄が晩年に住んだ九州、能古島の家・月壺洞の話から始まり、

東京、石神井の自分の家のこと、父の仕事場の離れのこと、

自分自身の暮らしぶりや、山の家のことなどなど。

 

建て替えにまつわる、建築家とのやり取りや、

兄一家との二世帯住宅のエピソード、

また、自分が幼い頃の家の記憶や父との思い出、

家にまつわるモノ〜表札、本棚、間接照明、キッチン用品、絨毯などの話が、

ユーモラスな筆致で綴られていきます。

 

一般的には、知的な芸能人というイメージのある檀ふみの、

人間らしい深みのある側面がほのぼのと感じられる、

珠玉の一冊。

 

しかも最終章では、家族との思い出が詰まった家と庭が

道路建設のための立ち退き問題に直面するのです。

 

ささやかな人々の想いと、抗することのできない時代の流れに、

物悲しくしみじみとした読後感を覚えます。

 

今となってはクラシックな昭和の文士のイメージを持つ檀一雄の

作品も、一冊読んでみたくなってきました。

株式会社山下建具店 〒710-0142 岡山県倉敷市林130番地
086-485-0172
Copyright (C) Kabusikigaisha YamashitaTateguten. All Rights Reserved.